血液ガス分析と酸素濃縮器

DMが進行してくると呼吸への影響が出てきます。
呼吸機能低下に対する介護について、ここに、アークの経験を書きます。

専門的な用語や、詳しいことは、私自身完全に理解して介護ができていた訳ではないので、私のわかる範囲と事実を掲載します。
当然ですが、アークの主治医の先生と相談しながら、指示をうけながらの酸素濃縮器の導入でした。

酸素濃縮器の導入は、アークの呼吸の仕方の変化(「胸腹式呼吸」から「腹式呼吸」になる)、血液ガス分析の値、酸素飽和度等で状況を見ながら決めました。

※なお、「血液ガス分析」は、どこの動物病院でもできるわけではありません。将来的に血液ガス分析を実施して万全を期したい方は、あらかじめ受けられる病院を早めに探して確保しておくことをお勧めします。

PaCO2:二酸化炭素分圧
PaO2:酸素分圧
SaO2:酸素飽和度

検査時期は発症後からの大体の経過時間を表しています。

検査時期PaCO2
PaO2
SaO2
備考
2年5か月頃33
90
97
初めて血液ガス分析。
通常の範囲内の値だった
2年9か月頃42
77
92
若干、値が悪くなりだす。
3年頃47
75
92
少しずつ値が悪くなっていた。
3年2か月頃49
76
93
また、値少し悪くなった
3年3か月頃54
72
91
値が極端に悪くなる
参考正常値

でも、朝晩のカートでの散歩は、苦しそうな様子はなく、とっても楽しそうで、少しくらいの雨や雪でも、濡れない工夫をして散歩に連れ出していました。
カートでの散歩時は急変が怖かったので、常に携帯酸素を持ち歩いていました(カートへの乗せ方が悪かったのか、2回ほど使用しました。身体の向きを変えたり、酸素を数分吸わせることで落ち着きました)。

完全に酸素ハウスから出られなくなったのは、亡くなる1か月くらい前(発症3年4か月目ころ)です。この頃には、食事の介護・水分補給にすごく気を使いました。
その後、水分を思うように摂取させられなくなり、輸液を開始しました(毎日ということではなく、口から取れなかった量を補給するかたちで)。
完全に、水分・食事を取らなかったということは、一日も無く、亡くなる当日まで、食事はできていました。

専門的なことが多く、なかなか素人ではまとめきれません。
酸素濃縮器が必要になってくるころには、食事の介護も大変になってきます。DMでの呼吸機能低下だけでなく、肺炎や感染症での発熱等、注意することがたくさんあります。
先にも書きましたが、血液ガス分析での値が悪くなっても、犬自身はそんなに苦しがる様子はなく、どのくらい苦しいのかは判断できません。
事実、酸素濃縮器を使い始めた発症3年目のころ、2泊で旅行に出かけています。当然、事前に獣医さんと相談をし、腹圧等に注意しながらということで、出かけました。
また、その後(発症3年2か月目ころと3年3か月目ころ)も、日帰りでお出かけ出来てました。
酸素テントにしても、酸素ハウスにしても、犬自身にはストレスになるのかなって思います。
このストレスがどのくらい悪影響があるのか、「血液ガス分析の値がどのくらいになると、どのくらい苦しいのか」、解らないことだらけです。

アークの場合のように、検査の結果が悪くなり出して、すぐに酸素濃縮器を導入するか、また、もっと苦しそうになってから導入するかは、飼い主さんと獣医さんとよく相談して、対応することをお勧めします。

酸素濃縮器(レンタル)

酸素補給アイテム

酸素室(自作)


参考

以下参考になりそうな事項を私なりにまとめました。

  • 腹式呼吸になってくると自分で体温調整が難しくなってくるので、熱もないのに暑がったりしていました。
    マットと身体の間のこもり熱を取ってあげるだけでも、楽そうになりました。また、酸素ハウス内の温度と湿度調整も大切です(介護のページの動画参照)。

  • 血液ガス分析の値が悪くなっても、あまり犬自身が苦しそうに見えないということについて、以下に岐阜大の神志那先生の文章を引用させていただきます。

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DMが進行する中で呼吸への影響が出てきますが、DMの呼吸機能障害についてはまだよく理解されていません。
人の呼吸機能を評価する検査を犬に実施することは困難です。
たとえば、肺活量や呼気ガス分析などを犬で測定することはほぼ不可能です。これに代わる方法として犬では血液中のガス分析が有用です。
血液中の酸素分圧や炭酸ガス分圧を測定することで、どの程度ガス交換ができているかを客観的に評価することができます。
外見上、呼吸機能が低下していないと思われる時期から、すでに血液ガス分析値は変化しています(低酸素血症や高炭酸ガス血症が起きている)。
実際には酸素分圧がかなり下がっていても、一見、呼吸機能に全く問題ないように見える犬が多いのです。
これは何故かと言うと、おそらくDMがゆっくりと進行する疾患であるため、呼吸機能の低下に伴う変化に体が慣れているのではないかと思います。
登山家が高い山に登る前に、低酸素の環境に体を少しずつ慣らすのに似ています。

岐阜大学・神経科

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血液ガス分析について

動脈血を採取し、酸素と二酸化炭素の量を調べることによって、肺が正常に機能しているかどうかを調べることです。
大腿動脈から動脈血を採血し、採血後、直ちに血液ガス分析器にて測定を行います(採血後時間が経つと値が変化するため)。

なぜ、検査を動脈血で行わなければいけないか。

ヒトを始めとする高等動物は、生命活動に必要なエネルギーを得るために、体内で酸素を消費し、二酸化炭素を発生させる。

体内で発生した二酸化炭素は血液(静脈血)に乗って肺に運ばれる。

肺では呼吸によって血液中の二酸化炭素を放出する。一方、酸素を血液中に取り込む。

肺を通過した後の血液は酸素を豊富に含んでいる(動脈血)。

この動脈血で、酸素と二酸化炭素の量を調べることによって、肺が正常に機能しているかどうかが解る。